はじめに
REM睡眠行動障害とパーキンソン病の関連
寝ている間に寝言を言ったり、頻繁に体を動かしたり、夢を実際に演じているような行動をとったことはありませんか? それは「REM睡眠行動障害(RBD)」という、いくつかの神経疾患と関連する興味深い医学的状態かもしれません。誰にでも起こりうるものですが、特にパーキンソン病と深く関連しています。
この記事では、両者がなぜ結びついているのか、また症状を軽減・予防するためにどのような治療法があるのかを探ります。RBDとパーキンソン病を理解することで、類似の症状に悩む人々は日常生活でよりよく対処できるようになるでしょう。
REM睡眠行動障害とは
REM睡眠行動障害(RBD)は、REM睡眠中に過剰な運動活動が生じる神経疾患です。これはパーキンソン病、レビー小体関連疾患、認知症、そして多系統萎縮症などと密接に関連しています。RBDの患者は鮮明な夢を見ながら、軽い体の動きから激しい身体活動まで幅広い行動を示すことがあります。
パーキンソン病との関連性
RBDは、本来REM睡眠中に起こる「筋肉の麻痺」が欠如または減弱することで、夢を実際に体で演じてしまう状態です。これはパーキンソン病の早期兆候と考えられています。研究によると、パーキンソン病患者の約80%が生涯のどこかでRBDを経験し、またRBDを持つ人の約40〜50%が5年以内にパーキンソン病を発症するとされています。さらに2019年の研究では、診断前にRBDを経験していた患者は、そうでない患者に比べて運動機能や認知機能の低下がより深刻であったと報告されています。RBDとパーキンソン病の結びつきの正確な理由はまだ解明されていませんが、研究は続けられています。
なぜRBDはパーキンソン病と関連するのか
覚醒時の運動を制御する脳構造や神経伝達物質が、睡眠中の筋肉運動の制御にも関与していると考えられています。パーキンソン病ではこれらに病理学的変化が生じ、REM睡眠関連の筋活動が増加し、RBDエピソードが起こりやすくなる可能性があります。RBDは早期兆候とみなされ、RBD診断から10年以内に最大70%がパーキンソン病を発症するとの報告もありますが、すべてのRBD患者が発症するわけではありません。
RBDの薬物療法
症状が本人やパートナーに不快を与えない場合、治療は不要なこともあります。必要に応じて以下の薬が用いられます。
- メラトニン:睡眠・覚醒リズムを調整するホルモン。サプリとして服用可能。
- クロナゼパム(Klonopin):脳の活動を落ち着かせ、安眠を促すベンゾジアゼピン系薬。
- 抗精神病薬:精神症状の軽減に用いられ、RBD症状の緩和にも用いられることがある。
REM睡眠行動障害の主な症状
- 睡眠中の大声での会話や叫び
- 手足を振り回すなどの激しい動き
- 夢の内容を反映するような行動
- 夜間に熟睡を維持できない
診断方法
病歴聴取、身体診察に加え、必要に応じて検査を行います。神経学的診察、脳波検査(EEG)、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)などで、RBDに関連する異常な運動や生理指標を確認します。RBDが診断された場合、パーキンソン病への進展リスクを踏まえ、定期的なフォローが重要です。症状の変化や悪化があれば速やかに受診します。
治療法
根治療法はありませんが、薬物療法と生活習慣の改善で管理可能です。薬物ではクロナゼパム、メラトニン、プラミペキソール、ガバペンチンなどが用いられます。生活面では、夕方以降のカフェインを避ける、良好な睡眠衛生の確立、規則的な運動やリラクゼーション法が有効です。寝室を暗く涼しく保ち、ラベンダーなどの穏やかな香りを用い、就寝前のスクリーン使用を避けることも推奨されます。
RBDは中枢神経の変性疾患であるパーキンソン病と関連することが多いため、疑いがあれば早めに医療機関を受診しましょう。
パーキンソン病とRBDの研究
研究では、RBDを持つ人は持たない人に比べパーキンソン病を発症しやすいことが示唆されています。RBDを伴うパーキンソン病患者は、病状の進行が速く、運動症状や軽度認知障害の程度が強いという報告もあります。強い関連性が示されることから、パーキンソン病患者にはRBDのスクリーニングが推奨され、重症化リスクの高い患者を早期に見出す一助となります。
RBDが疑われるときの対応
自分や家族にRBDが疑われる症状がある場合は、医師に相談してください。必要に応じて神経学的検査やMRI、睡眠検査が行われます。診断後は、薬物療法に加え、アルコールを避ける、定期的に運動するなどの生活改善が有用です。ベッド柵や床の保護材などの安全対策も推奨されます。
FAQ(よくある質問)
Q. 睡眠とパーキンソン病の関係は?
RBDはパーキンソン病と強く関連し、睡眠中の異常行動や日中の過眠、入眠・中途覚醒の困難などがみられることがあります。
Q. RBDはパーキンソン病の進行に影響しますか?
RBD症状は病状の進行に伴い軽減・悪化する場合があります。睡眠障害は進行により変化しうるため、変化を感じたら医師に相談してください。
Q. パーキンソン病に関連する睡眠障害の治療は?
カフェインやアルコールを避ける、規則正しい睡眠習慣、定期的な運動などの生活改善に加え、医師の判断で睡眠覚醒リズムを整える薬が処方されることがあります。
Q. パーキンソン病と強く関連する睡眠障害は?
REM睡眠行動障害(RBD)がもっとも強く関連するとされます。
Q. パーキンソン病は何と関連していますか?
パーキンソン病(PD)はRBDとの関連が指摘されています。RBDではREM睡眠中に会話や攻撃的行動、夢を演じる行動などがみられます。PD患者の最大80%がRBDを併発するとの報告もあり、遺伝学、脳内機序、ドーパミン変化など複数の要因が検討されています。
おわりに
睡眠パターンの変化に注意を払い、RBDが疑われる場合は早期に医師へ相談しましょう。定期的な診察と、処方薬の理解・適切な使用は重要です。パーキンソン病とRBDの関係では、運動症状を含む早期の兆候を見逃さないことが有効な対応につながります。睡眠の変化を感じたら、速やかに医療専門家に助言を求めてください。
